その6 エレベーター(続続)

 シンドラーエレベータのメンテナンス契約会社の技術員、早木 努は、油まみれの手袋を外して、自慢の長髪を両手でかきあげながら、失神した女を膝に抱えて、さっきから「まいったなあ」を連発していた。

 

「まいったなあ・・・・なんだよお・・・『調整中』って、札が見えなかったのかよお・・・」

「いきなり登ってくんだものなあ・・・電源切んなきゃ、こっちがやばいところだったぜ・・・」

「夜中に呼び出された上に、これだもんなあ・・・・まいったなあ・・・やってらんないよお」

「しっかし、まいったなあ・・・やっぱ救急車呼ぶっきゃねえかなあ・・・・・」

「課長に又怒鳴られんなあ・・・・・」

        

「完」

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